とにかく削りまくろう!
旋盤を導入してまずは何でもいいから削りたい!しかしなかなか適当な金属材料はないものです。出来れば柔らかくて手ごろな長さのアルミ棒があれば…という
ことで、発見。TOWERHOBBIES製のXACTOナイフもどきのアートナイフがアルミ軸で、18センチくらい。直径は1センチくらいで手っ取り早
い。
早速削ってみました。オー削れる削れる!回転を上げ、刃の縦送り(自分から見ると横。右から左に送る)をゆっくりやるとつるつるの面が
出来ました。
今度は端面削りです。外周から中心へこれまたゆっくり送ると奇麗な同心円模様が出来るじゃありませんか。うーむ美しい。
ではテーパー削りということで、刃物台を45度傾け、斜めに削り取ります。これも奇麗。
なーんだ簡単ジャン。
突っ切り
今度は切断です。突っ切り板バイトを準備します。
回転しているアルミ軸に薄い板状の刃物をぐいぐい押し付け、削りながら切断していきます。これもOK。奇麗に切り取られました。
突っ切りってみんな刃が折れるとかいろいろ言うけど、別に大丈夫だな…(後で自分の浅はかさが分かる)
ドリルを使ってみる
心押し台にドリルチャックをはめてみます。ドリルは普通キリが回り、工作物にねじ込まれていきますが、旋盤の場合は反対で、工作物が回って、静止している
キリに押し付けられていきます。
これも無事成功。止まったドリルから長いキリコがずんずん出てくるのはなんとも不気味。
削り痕を見ると、ぴかぴかに輝いていて、普段のドリルがけからは想像もつかない奇麗さです。旋盤恐るべし。
バイトを磨こう
オイルストーンを買ってきて、使ったバイトを研いで見ます。ミニ旋盤はどうしても強度が心細く、バイトがよく切れないと大きな力がもろにかかってたわみ、
振動がでて、仕上がりが汚く、騒音も大きくなるからです。
包丁研ぎみたいにあまりゴシゴシやることはなく、角をシャープにしてやればそれでいいのです。
ただ刃先は丸みを持たせます。本当にキンキンに尖ってると、仕上げ面が縞縞になり、実用に堪えなくなります。
軟鋼に挑戦
ここからが大変でした。
軟鋼丸棒が手元になく、ホームセンターにも手ごろなものはありません。
仕方なく、12mmのズンギリ(全ネジ、棒すべてがネジになっているやつ)を買ってきて、10センチくらいに突っ切って、右勝手バイトでねじ山をそぎ落と
します。
ところがどっこい。ネジがたわんで刃物の上に乗り上げ、ロックしてしまうではありませんか。幸い旋盤のドライブベルトをわざとゆるめにしていたので、ベル
トが空回りして、工作物もバイトも折れずに済みました。
どうしようもないので、切込みを極僅かにして、切削油をどんどんかけながら根気良く削りました。切削油はこの時点ではマシン油を使っていました。
どうやらねじ山を全てそぎ取りました。さて仕上げはと。トガリ先バイトを使用します。回転を上げてゆっくり送って…シマシマ仕上げにな
りました。
もっと回転を上げて…だめ。
うんと回転を落として…だめ。
うーむ、旋盤恐るべし。
つるぴかに仕上げろ!
四苦八苦して削ってもなかかなつるつるには出来ません。
そんなある日、工場竣工を見に(というか新居見物に)親がやってきました。
親は旋盤工でもないし、経験も全くないそうですが、妙な事を言い出しました。
「会社で使っているのを見たときは、バイトを送りと逆に思い切り倒していた」
教科書ではそんな事をすると接触面積が増えすぎてビビルはずです。でも親父は間違いなくそうだったと言い張りますので、巧く行かんところを見せるとばかり
試してみるとあら不思議、キリコが幅広で薄く出てきて、仕上がりは全然でこぼこになりません。
「もっと倒していたはずだ」ということで限界までバイトを寝かせると、仕上がりは鏡面にこそなりませんが本物の工業製品みたいにつるつるに仕上がりまし
た。
流石にこれには悔しいが参りました。うーむ老人恐るべし。
ただ、これを後で試そうとしてもなかなか巧く行きません。回転数や送り、傾け、材料の剛性などが複雑に絡んでいると想像できます。
金属加工の大先輩たちにメールで聞いてみますと次のような回答がありました。
-
「ノーズ半径が大きくなったのと同じ効果ではないか」
-
「ありえる」
-
「バイトとバイト台のリーチが縮まるので、剛性が上がったのと同じ効果ではないか」
未だに良くは分かりませんが、仕上げの奥の手としてとっておくことにしました。
センターで押せ!
センターってアクセサリがあります。文字通り中央なんですけど、工作物の回転中心部にセンター穴というちょっと変わった穴を開け、そこを尖った円錐の先で
支えますと、旋盤の回転中心に正確に一致しますので、長めの物を精密に支持して削ることができます。
また工作物の両端をセンターで支え、片方に回し金(ケレとも言う)をかけて駆動することで両センター削りが出来ます。これは両端とも正
確に一致していることになってまして(勿論僅かに誤差はあるはず)、工作物を工作途中で左右を入れ替え(トンボというらしい)てもブレが出ないという仕掛
けです。
長めの捧(ズンギリから削りだしたもの)を削るため、センター穴をセンタードリルでもみます(穴あけのこと)。
センタードリルは2段になっていて、ちょうどアポロの指令船と脱出ロケットみたいな格好の先端になってます。指令船の部分の角度は正確
に60度で、センターの先端角と同じです。
工作物の端面を削って平面を出し、その上でセンター穴を開けます。
最初なので押し加減が分からないので軽く軽く押し、食いついてキリコが出だしたら徐々に強く押しまして、0.5mm強掘り込めれば終わり。
主軸側はこの際3つ爪チャックで、心押し台は回転センター(ボールベアリングが入っていて回転できるセンター)で押して円筒削りしま
す。
別段何ということはないんですが無事削れました。
この翌朝息子やかみさんに自慢しても知らん顔されたのは言うまでもありません。
真鍮を削る
今度は削りやすい代表の真鍮を削ります。でも真鍮は食い込みを起こしやすく、バイトが食い込んで折れ、弾みで飛んできて作業者に突き刺さるそうでちょっと
怖いです。
本来はスクイ角(回転物に対し、刃先がすくい上げるように付いている角)をまったくつけないのが正式らしいんですが、鋼材用のバイトで
少々のスクイ角が付いていても事実上問題ない、と教科書にありましたので、そのままいっちゃって見ます。
まずは12φ、1000mmの真鍮棒を150mmくらいに突っ切ります。これは難なくできました。
続いて円筒削り、右勝手バイトで削っても、とがり先バイトで削っても綺麗に削れます。その代わりキリコが砂山のようにもりもりと出てき
ます。
ついでなので両側にセンター穴を開け、回し金をつけて両センター削りもやりました。特に問題なし。
そこでいよいよ、やってみたかったネジ切に挑戦です。
ネジ切りする
ねじ切りは、おネジとめネジがありますが、今回はおネジをきってみました。
JIS規格はさっぱり知らないので適当です。直径は5mmくらい、ピッチはどうでも良かったんですが、細かいほうがかっこよさげなので
0.5(1回転について0.5mm進む)にしました。
自動送り歯車をピッチ0.5にあわせて組み、減速装置を組み付けて主軸回転数を80rpmまで落とします。ねじ切りバイトをセットして
まずは軽く一発削りました。
うーん、大体よさそう。
本当はまっすぐ突っ込んでいくと刃の当たりが増えて、ビビリやすくなり、良くないのですが、面倒なのでそのまま突っ込ませます。切り込
みは0.3mm、次に0.2mm、0.1mm…とどんどん少なくしていきました。
思ったよりも簡単に切れます。できたねじ山もとても綺麗で惚れ惚れしますね。
でもM6の0.5ピッチなんてネジはその辺にはないので、自分でナットも作らないと合うかどうかわからないのです。
まあ細かいことは放っておいて、金色に輝くネジをぼんやりと眺めて焼酎でも飲んでおりました。
大物をぶん回す
そうこうしているうちに、山洞さんから鋼材が届きました。今回頼んだのはドリルロッド、SS400ミガキの40φと15φ、A5056Sアルミ合金30φ
といったものです。
ドリルロッドは切削焼入れして、自作バイトを製作する予定です。アルミ合金は用途未定ですがRC用パーツ、SS400は削りの練習&旋盤の小アクセサリ製
作です。
まずはいつもあわせるのが面倒なバイトの刃高あわせのために刃高ゲージを作ろうと思いました。
そのためにはこの40φ、300mmもありとても重いんですがこれを突っ切らないと仕事になりません。
固定振れ止めで押さえ、突っ切りバイトをどんどん突っ込んで行きますと物凄いビビリと振動、音で、昼寝していた子供たちが起きてくるほ
どでした。
こうなったらしょうがないと、かまわず突っ切っていき、最後の数十ミリをハクソー(弓鋸、金切鋸)で切ります。これでも結構骨でした。
何とか突っ切って、端面を削って多分正しい円筒にしました。
よく考えると、突っ切るのは何も棒の端でなくて、チャックのすぐ近くでも良かったんですね。それならそれほどビビらないでしょう。
刃高ゲージの制作
で、切った丸棒を複式刃物台の上に乗せてみたところ、やや大きすぎで、考えていたようにネジを切って指示棒をアジャストできるようにしよう…というのが完
全に無意味だということが分かりました。
だったら丸棒自体に段を切ってその高さを心高にすればいい。というわけで、単なる段削りになってしまいました。
でも思ったよりも綺麗にできてご機嫌です。材料が太くてビビリにくいからか??それともネジ棒とは材質が違うのか??ネジ棒は色も少し
違うみたいだし、SS400よりもちょっとねばいような感じで、よく毟れました。
SS400削りはもうちょい修業してみます。旋盤やフライス盤の止めネジをハンドルに改造するってのが「ミニ旋盤を使いこなす本」にも書いてあって便利そ
うです。
特に刃物台や心押し台の止めネジが面倒だし、それにドライブベルトのテンションプーリーがまためんどくさいのでこれも改造してしまおう
と目論んでます。
ビビリ
削っていると、あるいは削ろうとすると、まあどっちでもいいんですけど、材料を回してバイトを当て、キリコを作ろうとするとキーとかブーと
か嫌な音がして材料かバイトか旋盤かが振動し、挙句に削り痕がシマシマで汚くなる事をビビリと言います。ビビルとかって使うわけです。別に
下品な言葉でなく、専門用語みたいです。他にも焼きを入れるもれっきとした用語ですが。
ビビリがあっても削れればいいというならぐいぐい削ってやることもありますが、酷い音で周囲からクレームが来ると削るものも削れないの
で対策が必要になります。
教科書によれば、回転数を落とし、刃をしっかり研いでやると改善されるようです。あとは送り(回転でなくて刃の移動)を大きくしてやる
と止まったりします。回転数を上げると余計酷くなるみたいです。
40φのSS400(一般用圧延鋼捧でよかったっけ?要するに焼きの入らない極普通の鉄棒)を切る話は上の通りなんですが、このときが
一番酷かったです。でも細い材料はそれ自体がしなってしまうのでひどくビビリます。ネジを切るために6mm丸棒を削り出したりするときはビビらないよう回
転数を抑えて、バイトをしっかり研いで、送りは止めずゆっくりとやるとうまいこと行きます。
こんな時のキリコは髪の毛のように細く、しばしば途切れ、左右にランダムに巻いたりしますし、よくよく見ると太さも一定しません。送り
の速度のムラでしょう。修業が足りません。こんなキリコではお客様に出せないのでまだ修業です。オマケに切削面もバイトが尖りすぎているとシマシマでざら
つき、良くありません。
良い速度で、良く切れる刃物で、良い送りをかけると、きれいに巻いたキリコが途切れずに流れるように出てきます。まだまぐれでしかそん
な切削は出来ません。練習あるのみ。
ちなみに旋削品と思われる市販の部品とかも、深い谷間の部分には以外にビビリ痕を発見することがあります。ビビってんジャンゴルァというのは簡単だけど、自分でやるのは結構骨ですよ。
ネジ切り
JISもよく分からんのに、ネジ切りにチャレンジその2です。
今度は全ネジを削った軟鋼丸棒をM6x1.0のネジを切ります。これを使って刃物台の中央をハンドルにするつもりです。
まずはM6だから外径を6.0mmに円筒削り、勿論センター穴をもんで回転センターでしっかり押します。
さてこれを送りが1.0になるようネジ切り歯車を設定し、軽く一発削って見ます。
ピッチは??あれ変だぞ。よくよく見るとネジ切り歯車の順序が逆で、0.75ピッチになってしまった。
軽く筋が入ったくらいなので、気を取り直し正しく1.0ピッチで切って見ます。
今度はピッチゲージでもOK。では現物と見比べて…あれれ、現物はφ5.5だ。これでは遺憾に思いますって感じで、またもや円筒削
り。
今度は正しくφ5.5にし、29度に旋回させた刃物台を少しずつ送り込みながら自動送りをかけます。だんだん山の形が様になってきま
した。
しかし、どうも感じが変。何かがおかしい。
よくよく目を凝らすと、ひょっとすると山が倒れているかもしれないという気がしてきました。
しかも、ネジの先の部分がひどく、根元は割りにきれいに出来ています。
この原因は
-
バイトそのものがどうも真っ直ぐになっていなかったようだ。
-
ネジのブランク(ワーク。ブツ。要するに材料)が弱いので切削圧に負けてしなり、山が倒れた。
などが考えられます。
既存のめネジに押し込もうとしてもうまく噛みません。シクシク…
気を取り直し、今度はアルミで同じネジを切ってみます。あくまでネジが切れる事を確認するだけで、刃物台の固定には使えないものです
が。
アルミなので軽く切り込め、ネジ自体は奇麗に削れています。
出来上がりを見てみるとやはり半分は山が倒れており、根本は正しいみたいです。
バイトではなくブランクのしなりのせいで不良になっているようでした。
仕方ないのでドレメルのリチウムコードレスでぶった切り、頭を研いでやると、既存のめネジに軽くねじ込めました。
とりあえず正しいネジが切れました。このサイズならダイスでもいいんでしょうが、まずは50点でも、0点でないので自分的には今日は
合格ってことにしました。
あとはもっといろんなサイズでネジを作って見ます。 |
中グリ
知人から中グリの依頼が来ました。30mm厚の鉄板?に19φの穴を開けたいらしい。もともと12φの穴は開いているので、中グリです。ドリルでは厳しそ
うだし、ドリル自体も安くなさそう。
中グリはまだ未経験なので練習が要ります。物自体の大きさがまだ分からないけど、面板より大きいならちょっとまずい。ロータリーテーブ
ルも面板を利用することになりそうだからです。
最悪、堅木の即席面板を使って固定し、エンドミルで加工ということになるかもしれません。
それでも駄目なら棒ヤスリで一仕事ってことになりそう。
車の部品の一部らしいのですが、プレスで作られている部分みたいなので、多分軟鋼でしょう。だったら刃が立たないとかはないでしょう。
中グリ
友人から部品がやってきました。車のダンパーを固定する穴を広げて欲しいそうです。実測するとφ12、t42ほどあり、中グリバイトでは届かない可能性が
高いようです。
とにかく削ってみます。
面版を固定し、その上に締め金で押さえつけます。面板作業は初めてなので、どうにも段取りが悪い。
いろいろ苦労してセンター出しもし、回してみます。
振り回しても外れ飛ぶ様子はないようです。しかし実際恐ろしい。こんなもの(500g以上はある)がブン回って飛んできたら骨折くらい
はしそうです。
中グリバイトを送り込んでみるが、なかなか切れない。
バイトの取り付け高さ、スクイ角、刃先角などさまざまに調節してみたが、わずかに数ミリ削れただけで、思ったようにざくざくとは行かき
ません。
よく見ていると、バイトがしなって、いい角度で切り込めていないようです。しかしオーバーハングをもっと少なくすると今度は加工面に届
かない。
面版との間に数センチの板をかってやるといいと思うが、あいにく手ごろな材料がない。
とがり先バイトで端面を切ってみるとえらい勢いで削れてくれるので材質は柔らかそうです。SSよりはるかによく切れます。快削鋼なの
か?
今夜フライスで再挑戦してみるつもりです。
中グリなぜか成功
2004/11/30
中グリがなぜか成功しました。原因は不明ですが、嘘みたいにシャーシャーと削れます。
やったことは、
-
丁寧にホーニングした(オイルストーンで砥いだってこと)
-
バイトをやや傾け、バイトの先端の角だけで切り込むようにした
-
刃高を正確に調節した
-
回転数を上げた(低速側プーリの3速目)
ということだけなんですが、流れ型のキリコがひょいひょいと飛び出してきました。
一度全く切れなくなり、砂鉄のようなキリコが磁気を帯びて僅かに出てきたことがありましたが、何と主軸を逆回転していました。
昨日切れなかったときは逆回転してた訳はないのですが(切れ具合も違った)…やはりバイトのセットがまずかったということでしょう。
いずれにしても半分程度まで(20mm以上と思う)えぐったので、後は裏から削るだけです。2個ある同じ部品を同じように加工しまし
た。
裏からは四つ爪単動チャックでつかめそうなので今夜またチャレンジです。
それにしてもやはり端面を削ると信じられないくらい軽々と削れるので、これは快削鋼なんだろうと思います。
中グリついに完成
20041201
中グリが完了しました。やれやれ疲れました。
結局反対側は四つ爪単動チャックできっちりつかむことができました。センター出しはダイヤルゲージでやるのが筋でしょうけど、面倒だっ
たのでセンターでしっかり押してからチャックを均等に締めました。
心は問題ないくらいに合っていたようです。
今回は反対側よりも削り代が長いのですが、根気良く刃物台を往復させます。
1時間くらいかけて2個の部品を、径19、肉厚2.5、長さ30程度削り落としました。
削っているうち、やはりこの中グリバイトはしなりがあるのが目に見えるし、相当な力を受けて削っていますが、ではどのくらい切り込める
かはまだ分かりませんでした。
そのため、一度切り込み0.2mmで思い切り送ってみました。送りハンドルは60rpmくらいで手回しします。ブツは360rpmくら
いで振り回してましたので、それでも0.166mm/主軸1回転という計算になります。
普段仕上げ削りする時は、ハンドルは4秒に1回とか、もっと遅く回しますので、相当な早送りのつもりです。本格的な旋盤からすると相当
遅いと思いますが…
すると相当な手ごたえで、主軸の回転も下がっているのがわかります。キリコがモリモリという感じでせり出してきて、油の焼けるにおいが
します。
後でキリコを見てみると、幅は2,3mmで、一部コバルトブルーに変色していました。
こんな色になるのは500度以上らしいです。ハイスバイトでも耐熱温度があるので、これ以上の無理は止めた方が良さそうです。仕上がり面も奇麗ではないの
で、結局仕上げ削りをしないといけません。
ただし荒削りなら、バイトが食い込んだり折れたり、ひどくびびることもなくて、実用的に使えるのが分かりました。
こうなると頑丈で長い中グリバイトが欲しくなります。刃物台のキャパシティや剛性等の問題もありますが、出来るだけ太いシャンクの中グ
リバイトを自作してみようと思っています。
据えぐりという手もあります。ミニ旋盤を使いこなす本を読めば分かりますが、私はバーチカルテーブルを持っていないので、往復台に加工
物を固定する方法を何か考えないといけません。
難物
20041206
大きい方の部品の中グリが終わったので、これでもう出来たも同然と思ったら、とんだ難物がありました。
サスのバネを受けるお皿だと思うのですが、若干高さが左右で違い、単に面板に置くと平面になりません。逆に置けば今度は面版が削られて
しまいそうです。
いろいろやった挙句、木材を枕にして面板に固定することにしました。
厚さ3mmくらいなので、やすりで削ろうかとしたのですが、ろくなバイスがないので諦めました。
某工具メーカーのベンチバイスは、机が傷むばかりでまともに固定できず、頭来てます。
このバイスのマウント部分を削ってきちんと押さえが効く様にすれば使い物になるかもしれません。
本当は大きなバイスが欲しいところなんですが…
いずれにしてもこの中グリが終われば、初めての請負実用業務終了です。
難物中グリ完了
20041207
ようやく終わりました。
まずはお皿を2枚重ねて一気に削ろうとしたのですが、押さえ金の寸法に無理があり、なかなか上手く押さえられないので、急がば回れで1
個ずつ押さえました。
最初の1個のときは、枕木がセンターに当たり、中心が出せず、面倒だったのでダイヤルゲージも使わずにカンでセンターを出しました。
そしたらこれが結構振れまして、そのまま削ると振動と騒音が大きく、切削油(菜種油)を沢山使いながら送りを小さくして削りました。
その段階で枕木まで中グリし、2個目はセンターで押して概略心を出していたので、楽に削れました。
中グリで心がずれると非常に削りにくいです。こんなことなら最初から木だけ中グリしていればよかったです。
何事も経験ですが。
面板作業には押さえ金やカイモノなどが手持ちであまりないので結構億劫になりますが、ついでのときに丸棒など切って適当なやつを作って
おけば良さそうです。
バイトの自作
20041221
先日の中グリの成果物は依頼者のところでちゃんと役に立っているそうです。良かった良かった。
で、バイトもいろいろ使っているとやがては磨耗して使えなくなくなってしまうだろうし、貧乏性の私は低コストで自作するということに
やっぱり惹かれるわけです。
それでバイトを自作することにしました。
まずは、完成バイト(ただの角棒で、まったく未完成なんだけど昔からそう呼ぶそうです)をグラインダーで成形し、丸剣バイトを作ってみ
ます。
丸剣バイトとは、上から見ると左右対称、刃先が60度になっている真剣バイトの先端が大きな半径のRになっているようなものです。これ
を作ったのは、ノーズ半径が大きいバイトで削ぐように切削してみたかったからです。
グラインダーで思い切りよく研削すると、バイトは焼けるほど熱くなり、指先をやけどしてしまいました。
少し変色してしまいましたが、ハイスなので大丈夫だろうと、冷ましながら成形しました。
ニゲ角、上スクイ角、横スクイ角もつけ、早速SS400丸棒を「削いで」みます。おおよそ気持ちよく綺麗に削ることができました。ただ
コーナー部分に切り込むと、さながら姿バイトみたいで、景気よくビビってくれてちょっと笑えました。
ではと、買い置いていたドリルロッド(SK4)をぶつ切りにし、両端を刃に、それ以外をシャンクにして固定するためφ6に削りました。
両端は一方は中グリバイト、一方は右勝手のようなシェービング法も出来るような感じに成形しました。
出来た刃先をガスバーナーで赤くなるまで焼き、水に突っ込んでかき回します。
一気に冷えて焼きが入ったかと、ヤスリで擦ってみるとなんだか削れるみたいです。
まだ加熱が足りなかったと判断し、今度はやや明るい赤になるまで加熱し、また水冷です。
今度は大丈夫です。ヤスリもつるつる滑ります。
SS400丸棒を右勝手の刃先で細く削り、またバイトを45度傾け、すくい削るようにセットすると幅広のキリコを出しながら綺麗に削れ
ました。
自分の作ったバイトで鉄が削れるなんて面白いです。
ただその後、グラインダーでさらに綺麗に成形しようとし、刃が狐色に変色するほど焼けたりしたのが悪いのか、何度か削っていると刃の角
が少し丸まってしまいました。もう一度成形して焼きを入れなおしてやる必要がありそうです。
ドリルロッドはまだたくさん手持ちがあるので、いろいろ作ってみようと思います。
後日談
以前から軟鋼丸棒の代用に使っていた全ネジを、研ぎなおして焼きを入れなおした自作バイトでねじ山を削り落としてみました。
シェービング法に準じた削り方にするため、バイトを45度傾けて、すくい上げるようにセットします。切り込みは0.2mm程度、送りは
毎秒0.75mm程度でしょうか。2秒で親ネジ1回転というところです。回転数は520rpmです(ML360の2速目)。ワーク径は12mm。ミニ旋盤
を使いこなす本の記事からするとややオーバースピードです。
ねじ山を削り落とすため、断続切削となり、送りハンドルにも衝撃が伝わってきます。
5回ほど往復させるとすっかり山がなくなりました。
それからあと2回、0.025mmずつ切り込んで仕上げしました。
バイトは欠けることなく切削に耐えました。また仕上がりも指先で凹凸は感じますが、自分のレベルからすると一番良い仕上がり方でした。
シェービング法で、刃の当たり幅が通常状態よりも広いので単位面積あたりの面圧が下がり、発熱が低下したと思います(旋盤のテクニシャ
ンにもそのようなことが書いてありました)。
炭素工具鋼のバイトは高速、重切削で高い熱を帯びない限りは大変良く切れ、経済的で、用途に応じ自作すると作業効率がよくなりそうで
す。
もっとも自分のようなタイプの場合、バイトを作ることが目的になり、本来の作業が本末転倒になる可能性がありますが…(キリコ製作が目
的だったんだっけ)
締まりばめ
20041228
以前から持ってはいるけど活用してないものが、ラジコンのモンスタートラックと、そのスープアップ用エンジンです。このエンジンは通常
のものの2倍くらいの排気量があり、馬力もカタログ上では2倍ほどあることになっていますが、最高回転数は低く、吹け上がりもゆったりしているので、通常
のギヤ比では加速最高速ともあまり驚くようなことにはなりません。
そこで、ギヤ比をうんと上げると、加速は鈍らず最高速が伸びると考えました。
計算では2倍近いギヤ比が欲しいところなんですが、市販品ではそんなものはありません。
したがって市販品のギヤを加工して単品製作します。
材料はギヤがなめてしまった遠心クラッチのベル(頂き物)、新しい別車種用(確か京商のファントムとかいう車の2速ミッションのギア)
の26丁ピニオンギヤです。
まずは残っているギヤを円筒削りで削り落とします。
続いてピニオンギヤのめネジを削り落とし、クラッチベルにはまるように中グリします。自作中グリバイトを利用しました。
ピニオンギヤは黒染めしてあったので、てっきり鉄だと思っていると、実はアルミであることが分かりました。
ロウ付けしようと思っていたのにこれではだめです。
強力な嫌気性接着剤(ケンキ。イヤケではありません。あったら恐い)も入手できません。
ビスで固定したりすることも考えましたがネジ穴しろがないし、部品を作るにしても材料が揃わず、やむなく圧入しました。
圧入しろは普通4〜5/100くらいだったと思うのですが、絶対抜けて欲しくないので1/10という非常に大きな値でやってみました。
バイスでぐいぐい締め付けると、どうもベルの細い部分がおむすび型に変形したように見えましたので、その部分を中グリしてごまかしまし
た。
たぶん、抜けることは無いでしょう。少なくとも試運転くらいは出来そうです。
鉄アングルの直角出し
20041228
面板作業をするのにイケールも何も無いのでは、固定するだけでも結構面倒なので、市販の鉄アングルを利用して直角を出してみることにし
ました。
最初にエンドミル6mmで削って見ます。少々騒がしいですが無事削れました。
でも削りしろが少なく作業に時間がかかります。
そこでフライカッターで安直に削ってみようと試しました。
しかし、バイスにしっかりくわえていると言っても、アングルのサイズの関係からオーバーハングが大きく、派手にビビリ音が出てしまいま
す。
切削自体は出来ているようで、鉄の黒皮をぐいぐい剥いて行ってくれます。
一応は削れたのですが、やはりエンドミルで少しずつ削った方が仕上がりもいいように思います。
エンドミル、鉄アングルに死す
20041231
弱小工場の弊社には盆正月などありません。触れる時間はいつでも操業です。
くだんの鉄アングル、フライカッターがどうも傷んでしまったようで、切れ味が悪くなってしまいましたので、φ6mmのエンドミルで平面
を出してやろうと作業をやってました。
そのうちひどくビビルようになってきて、うるさくて作業になりません。何気に作業をやってたんですが回転数を確かめてみるとかなり速す
ぎるようで、それならとぐっと落として最低回転(100rpm)でやってみます。
ところが切削音が変です。なんだか片刃しか当たっていません。こりゃまずいとエンドミルを取り外し、ルーペでじろじろ見ますと、片方の
刃の先端が欠けていました。
アーこりゃ遺憾、誠に遺憾。エンドミルの研ぎ方など知っているわけもなく、通販かなあとがっかり。
しかしこのミル、ハイスだから削ってバイトにしてやれ、と思っているうち、だったらつぶすの覚悟で研ぎなおしてみれば、と適当に決定。
ドレメルのコードレスリチウムルーターにアランダム系と思われる回転砥石を付け、35000rpmでちょいちょいと触れてやります。
すると巧い具合に研削できることが分かりました。ニゲだのスクイだのはルーペでよく観察し、それらしくなるよう角度を考えて少しずつ修
正研磨しました。
結論として、なんとなく削れるようになりました。何もしないより数段増しです。
側刃の研ぎはとうてい手におえなさそうですが、端面ならごまかせそうです。
後日談
エンドミルの切れが悪かったせいかめちゃくちゃにワークが揺さぶられ、XYテーブルもがたが目に見える有様になってしまったので、テーブルをばらし奇麗に
清掃した上で、剃刀を慎重に調節してしっくり滑るようにしました。気持ちよく作業できます。でも、アングルの直角は(というより平面さえ)未だ出ていませ
ん。アルミで修業やり直そうかなあ。
|