the

Mosquito

Moth

Laboratory

バーチャルインタビュー  2004/5/ 12

バーチャルインタビューは、モスキートモス号ファンの方々にメールでアンケートをお願いし、それを元に対談形式に再構成したものです。インタビューに応じてくださった方の校閲を経て公開しており、脚色等は行っておりません。

今回のお客様:tomiさん

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ムサシノが一番合う

MML :バーチャルインタビュー、今回のお客様はtomiさんです。tomiさんはかつてムサシノ通信にも載ったムサシノファンの方で、モスキートモス号には特に深い思い入れがおありです。この度はどうぞ宜しくお願いします。
 tomiさんはラジコン歴は中学1年の頃からで、実質20年程もなさっている大ベテランでいらっしゃいますが、これまでどのような機体を飛ばされて来られたのか教えてください。

tomi:初フライトは中1の時、OK模型のセスナで、父に製作してもらいパイロットは自分でした。他にはポンコツ号ジロー、日の出電工(編注:現在のテトラ)のペガサス20、ペンシルジュニア、ムサシノのリトルホーク号、エルロンチップ号(編注:いずれも絶版機)等です。
 実は飛行場所の確保が出来ないなどの理由で一時、ヘリにも手を出しましたが、人に危害を及ぼす恐れ大と感じ、平和でロマンチックに楽しめるムサシノ機へとたどり着きました。
 途中、オンエアー、ハンドランチグライダーのスイングなども飛ばしました。しかし今ではオンエアーなど、それなりの飛行エリアを要するものは近郊に飛ばす場所はなくなってしまいました。一方のスイングは、ショックコードなどを使ってせっかく高度を取っても、操舵が適切でないからか、すぐに降りてきてしまい、飛びを楽しむところまでいってないというのが実情です。
 やはりムサシノ機が私にはいちばん合っています。

MML :そうですか、お父様と2世代でラジコンを楽しんであったとは素晴らしいことですね。
 モスキートモス号ですが、いつ頃入手されたのですか?

tomi:1986年頃です。友人が飛ばしているのを見て、あまりにもユニークなその形と飛びっぷりに驚いたことがきっかけでした。それに抜群の自律安定性と超低速飛行性能に惚れ込みました。
 今でも一機所有しています。クリア塗装・クリアフィルム張りです。

MML :確かに他のラジコン機を見慣れると、あの飛びは普通じゃないというのは一目でわかりますし、衝撃的なものだと思います。仕上げがクリアということで、ムサシノが当時推奨していた超軽量仕上げのようですね。
 tomiさんの愛機ですが、フライトではどこが面白いですか?

ゆっくりだけでなく

tomi:まずなんといっても信じられないほどゆっくり飛ぶところです。しかもその速度域での操縦レスポンスが素晴らしく、操舵に対し即座に応答する操縦性の良さ。ただゆっくり飛ぶだけの機体ではないところにぜひ注目頂きたいのです。この感覚は誰かが飛ばしているところを実際に見るか、自分で飛ばしてみないとわからないでしょう。時速20km以下で飛べること自体が驚異的な上に、その速度域で操縦者の意のままに操れるのですから、大変奥が深いのです。

MML :おっしゃるとおりだと思います。飛ぶだけではきっと館林先生は満足されなかったでしょう。自在に操縦できてこそのスローフライト性能と言えるでしょうから。ハンドキャッチすら出来ますものね。

tomi:多くの人が体験しておられますように、スローフライトでは比較的簡単にハンドキャッチする事が可能です。実際の飛行をイメージしていただきたいと思いますが、操縦者の目線以下の低高度で水平直線飛行を失速ぎりぎりの速度で持ってきて、自分の目前を通過の後、ターンさせるためにラダーを切ったとします。失速限界付近の飛行速度で飛んでいるわけですから、当然すぐに機体は沈もうとします。それを見越して早めにパワーを入れながら、微妙なエレベーターの舵を入れる。

MML :なるほど。

tomi:常時フルパワーで飛ばしているフライヤーとの根本的な違いはここにあります。30度以上のバンクをかけ、エレベーターを引いて無理やり旋回させるのではなくて、あくまでスムーズに旋回をさせるのです。エンジンコントロールも一つの舵といった感覚です。

MML :ラダーの動きに即応して、実に滑らかにバンクし、そして見事に旋回する。スローモーションを見るようにゆっくりと旋回するモスキートモス号を自分で操縦しているというのはいつも不思議な感動があります。

tomi:実機では通常の旋回では、内すべりや外すべりをしないように、旋回計のボールでチェックしながら操縦するそうですが、ムサシノ機の場合、実機の飛行理論、航空力学に従った設計を施されているがゆえに、このような速度域における安定した旋回が可能であると解釈しています。
 つまり基本に忠実なフライトを独学でマスターするために必要な、飛行機自体の自律安定性と操縦性の両立を目指した設計がなされているからに他なりません。スローフライトに限ってはその機体の失速特性をある程度つかんでからでないと、そのような飛行は難しいですが、操縦技術が上がってくるにつれ、究極のスローフライトが出来るようになります。

MML :同感です。操縦性、安定性ともに低速での性能が極めて良いからこその低速飛行の面白さです。

tomi:モスキートモス号の場合、その性能がズバ抜けています。旋回時、翼が傾くことによって減少した揚力を補うためには、エンジンの出力を増加させなければなりませんが、エンコン、ラダー、エレベーターの三系統を微妙に同時操作することによって、水平旋回を維持する。
 以前、実機セスナ172型の操縦桿を握り、30度バンクでの旋回を体験させてもらったことがあるのですが、実機ではPファクターとかジャイロプリセッションなど、大きな質量を持ったプロペラが機首部分で回っている事による影響が出て、特に深めのバンク角で行う旋回では、一定した高度を保つことそのものが、けっこう難しいと感じた経験があります。
 つまり旋回するにしても、きちんと行うためには実機でも模型でも基本をきっちり身につける必要があるということを、体験したのです。この私の体験談は飛行機の操縦そのもの、それ自体が大変奥が深いということの実例としてご理解いただけるものと思います。
 基本性能を大切にして設計されたムサシノの飛行機の場合、なにげなく飛ばしていても、そういう実機の飛行特性に対する探究心すら自然と芽生えてくることもありそうです。操縦桿やスティックから手を放せばまっすぐ水平飛行するところも、実機同様です。 
 スローフライトではこれを低高度かつ、至近距離のフライトエリア内で機体の挙動を見ながら操縦するのですが、モスキートモス号ではこういう飛ばし方をしたとき、間違いなく優秀な性能を発揮してくれます。スローフライト飛行の方が、スケールスピードという面から見ても実機の飛行に近いものがあるのではないかと思っています。
 モスキートモス号は、フライトの醍醐味を、そういう速度域の中で味わえる機体としては最高のものだと言えます。離陸時はパワーオンで機速を上げていくと、実機のように尾輪を持ち上げて滑走していきますし、わずかなエレベーターアップで地面を静かに離れます。着陸では接地寸前のフレアー操作もきっちり舵が効きます。

MML :モスキートモス号は飛ばすだけならたやすいでしょう。しかし滑らかに美しくとなるとそこには繊細で微妙な操作の必要がある…

tomi:先代の館林氏は実機の操縦理論と航空力学についても研究されていましたし、そういう基本を大切にされていました。
 モスキートモス号の場合は軽量化を追求して仕上げた場合、スローフライトの性能はとめどもなく向上していく感じです。危険性が極めて低いので、ほんとに目の前を飛ばせます。目前通過の際には、送信機のアンテナをヒョイとかわしてよけるのです。繰り返しますがこの極低速域での、卓越した操縦感覚は他の機体ではまず、再現できないものと思われます。

MML :ムサシノ模型飛行機研究所が常に言い続けている、適切な上反角、適切な翼型、軽翼面荷重、そして安定性の確保を行った上に、十分な運動性も確保されているところが素晴らしいのだと思います。まさに巧妙な設計と言えると思います。モスキートモス号は単に安定しているだけの、鈍重な機体だと思われがちかもしれませんが、実際は繊細な身のこなしで軽々と低空を駆け巡ることができるし、多分その魅力が、飽きずに楽しめる元になっているのかもしれません。
 フライトの中で面白くないと思うようなところはありましたか?

tomi:当然の理屈ですが、低速性能を上げるために軽量化をすればするほど風には弱くなります。そのかわり、標準より軽量に仕上げたモスキートモス号を早朝時などの無風かそれに近い環境で飛ばせば、信じられないほどの低速飛行と、奥の深い操縦が楽しめます。

MML :確かに軽くなるほど風、特に横風には弱くなりますね。ですけどそれを補って余りある驚異的な低速飛行が可能になりますから、軽量化の面白さも外せません。私は520gくらいで飛ばして驚きましたし、新潟の馬場さんは06で505g、くうさんは電動450gくらいで「飛行船のようなフライト」と言います。あの凄さはやった人しか分からないでしょう。
 製作の方ではどうでしたか?

tomi:胴体とトラス構造のテール部との接合部、三角部材部分が難しかったですね。

MML :あの三角板はみんな難しいとおっしゃいます。あそこはエポキシで着けないといけない部分ですが、瞬間で点付けして仮止めし、あとで長いへらなどでエポキシを隙間に押し込むとがっちりと比較的簡単に作れるようです。
 フライトの方ではどうでしょうか?楽しい飛ばし方というものはありますか?

単輪8の字滑走ができる機体です

tomi:地面が整地されてないと厳しいですが、片方の主輪を接地させたまま、8の字旋回する飛行です。車輪がカラカラ音をたてながら飛びますし、これはスリル満点です。一見地味に見えるこの飛行は私にとっては宙返りや、ロールなどの種目よりはるかに面白いです。こんな飛行が他の機体で可能でしょうか…他の機体でもこれを試みましたがうまくいきませんでした。腕を磨けばモスキートモス号では、今までの機体ではとても考えられないような、こんな飛行さえ可能なのです。

MML :私はまだ試したことがないのですが、tomiさん以外に試している方もあるようですが、そのお話だと、なかなか難しいのだそうです。しかも8の字ですね。派手なアクロではないけれども、繊細で確かな操縦の腕がないととても無理でしょう。モスキートモス号使いの腕の見せどころなのかもしれませんね。
 機体の改造はされたりしましたか?

tomi:ありません。オリジナルのモスキートモス号が最高だと思っています。設計者館林氏のラジコン機普及への思いと、スローフライトの極限を狙った明確なコンセプト。ラジコン界が進むべき方向性への願いが込められていると思います。
 私の場合この機体に関して改良をしようと思ったことはありません。ゆっくりズムぶりのケタが違います、他の機体では決して真似のできない世界で、現所長の島崎氏も言っておられるように動力付きラジコン機としては間違いなく世界一の低速飛行性能機と申し上げても過言ではないでしょう。  

MML :モスキートモス号は本当にコンセプトがはっきりした機体です。これほど低速飛行を「愉しみ」の中心に据えたのものが他にあるかといえば、ないと言ってよいでしょう。25年たった今でもこれほど完成されたスローフライヤーがあるかどうか…おっしゃるようにオリジナルが最高に素晴らしいと思います。
 モスキートモス号を壊したことはありますか?

tomi:ハンドキヤッチで胴体をつかむつもりがトラス部をつかんでしまってその部分を壊しました。また地面スレスレを飛ばすことが多いので、翼端を地面にひっかけたりもしますが、軽いため壊れません。
 修理は壊れた三角胴トラス部分はフィルムをはがし、中で外れた構造部品を接着し直し、またフィルムをはって終わりです。

MML :胴体のトラスは華奢ではありますが、案外と丈夫なのと、いくら壊れてもまた直すことができるので気分的には不死身の飛行機の感があります。主翼はちょっと地面に引っ掛けたくらいでは壊れたりしませんし、軽いということがいろんなところでプラスに作用していると言えるのではないでしょうか。
 tomiさんは、モスキートモス号全体をみたときに、どういうところが好きですか?

tomi:自然界にいる昆虫か、あるいは動物の中にひょっとしたら類似するものがいそうなあの形と飛びっぷり、また地上に駐機している時、二車輪式で機首を持ち上げてのあのたたずまいが、第二次大戦機以前の古きよき時代の飛行機が重なって見えて来ます。
 ムサシノファンの方々なら映画『パールハーバー』をご覧になった人も多いと思いますが、冒頭のシーンに登場する複葉機が夕日の中をシルエットで飛んでいる姿を思い浮かべて下さい。私はこの映画のなかでも、後にパイロットになる少年二人がその飛行機を見上げ、憧れの眼差しで見上げるシーンが好きなのですが、スケールスピードで飛んでいる時のムサシノ機と重なる部分がありませんか? 少年時代、飛行機に憧れた思い出をお持ちの方なら、きっとうなずいていただけるに違いありません。

MML :時に生物のようでもあり、時に古典機のようでもあり、はたまた機能追及の結果のようでもある、あの不思議なプロフィールは一度見たら忘れられないでしょう。ましてやそれがのんびりと空を飛ぶ様と言ったら…飛びそのものもそうですが、スタイルも非常に個性的です。
 それでは、tomiさんより、これからモスキートモス号を作ろう、飛ばそうという方に励ましのメッセージをお願いします。

ひとりでに笑みがこぼれます

tomi:飛ばしていて、自然と笑みがこぼれてきます。まるで自分の意思を持ってこの世に出てきたのではなかろうかと思える、生き物のような飛びっぷり。
 操縦しなくてもきれいに飛んでくれますし、いざ操舵すればスティックの動きに即座に反応し、意のままに操ることができる。まるで飼い主の命令に忠実に従う忠犬ハチ公のような飛行機です。
 ムサシノの飛行機には模型飛行機本来の姿が宿っており、明確なポリシーが込められていて、素晴らしいと思います。
 特にモスキートモス号については、いいものはいつまでも愛され続ける、の典型だと思っています。私の知る限り、25年もの間、ベストセラーとなり続けている模型飛行機はおそらく例がないでしょう。この事実はこの機体がそれだけ優れているということをたくさんの方が認めているという証拠でしょう。
 MML管理者のtokuさん、本業のかたわら、当ホームページの管理は大変だと思いますがこれからもよろしくお願いします。
 最後になりましたが、愛するモスキートモス号に対する私からのメッセージです。どうかその形を変えることなく生き続けてください!

MML :飛ばしていて自然と笑みがこぼれる、これ以上のものがあるでしょうか。モスキートモス号がモスキートモス号である限り、いつの時代になっても、その魅力を見つけ出すファンが着々と増えていくに違いないと確信します。tomiさんどうも有難うございました。


tomiさんの愛機
 


ぶんけんサブマフラーが見える
 


エンヤ09-3型(左排気)と4型(右排気、現行型)
 


ムサシノから直接購入した「軽ラジコン機入門」にあった、館林所長(当時)と島崎研究員(当時、現ムサシノ所長)のサイン。あの熱い館林氏の重い一言と、雑誌ではいつも静かで控え目な島崎所長のファイト溢れる一言、時代背景が偲ばれる。
 
 
 


 
tomiさんのモスキートモス号の仕様
エンジン エンヤ09(旧型の左排気)、ぶんけんサブマフラー付き
プロポ フタバFM4チャンネル、ミニサーボ付き(チャレンジャーシリーズ)、250mAニッカド搭載
総重量 690g

 

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