the

Mosquito

Moth

Laboratory

バーチャルインタビュー  2003/8/ 22

バーチャルインタビューは、モスキートモス号ファンの方々にメールでアンケートをお願いし、それを元に対談形式に再構成したものです。インタビューに応じてくださった方の校閲を経て公開しており、脚色等は行っておりません。

今回のお客様:馬場さん

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最初から決めていた

今回のバーチャルインタビューは、新潟の馬場さんです。かつてムサシノ模型飛行機研究所のホームページがあったときは、馬場さんがムサシノ通信に投稿なさった文を読むことが出来ました。私にとっては伝説のような方ですが、本当にちょっとしたきっかけからメールを交換していただくようになりました。

MML:馬場さんこんにちは。本日はインタビューにお出頂いて有難うございます。

馬場 :こんにちは、新潟の馬場です。どうぞよろしく。

MML:早速ですが、馬場さんのラジコン開始のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

馬場 :ラジコン飛行機を始めてみようと思ったのは昭和57年(1982年)の秋でした。最初からムサシノと決めていたので、スカイカンガルー号を候補として館林さんに問い合わせの手紙を書いたところ、発売されたばかりのプレイリー号を推薦されました。
 初飛行は年が明けた1月、冬のさなかでしたがうまく飛んでくれた嬉しさとその面白さにすっかり虜になり、夢中だったですね。
 事情で平成4年(1992年)頃かな、ラジコンから離れてしまい、その後ちょうど10年間のブランクでした。
 そして今年の元旦、修復した当時のプレイリー号(2機目のプレイリー号です。固定フラップ付き)で復帰初飛行をしました。
 ラジコン歴はずっと飛行機だけでしたから、ちょうど10年ですね。ただ、その後のブランクがあまりに長いのが恥ずかしいです。

MML:まさしく正統のムサシノファンというか、王道のような履歴だと思います。他には何か楽しまれていた機体はありますか?

馬場 :えーと、実は、ですね…、当時売られていたムサシノの機種は全部1〜2機ずつ買いました。他にサンデーアルファ(ヨシオカ)、フラミンゴ(テトラ)、インザ・ムード(アトリエ・コキール)なども。こんなに買い込んでいながら更に途中からゴム動力のフリーフライト機にも手を出した事もあって当然全部作れるはずもなく、実際に飛んだムサシノ機は15、6機だと思います。おかげで押入れの中に未だに箱入りキットがいくつか残っている始末です。フレンドカブ号、トイボックス号(編注:ともにムサシノの絶版機)、先のインザ・ムードなどですが、なんともバチが当たりそうですね。

MML:おお、なんだかずいぶん名機が出てきますね。トイボックス号なんてまた凄くマニアックです。現状で飛ばせる機体はどのようなものですか?

馬場 :今飛ばせる機体は、新作のモスキートモス号(エンヤ11CX・D)、プレイリー号(修復機・固定フラップ付き・エンヤ09)、スカイカンガルー号(修復機・エルロン付4ch・エンヤ09)、双発モスキートモス号(修復機・エンヤ09・2基)、以上の4機です。

そろそろ順番かな

MML:やはりと言うかなんと言うか、すべてムサシノ機ですね。モスキートモス号は2機今でもあることになりますね。馬場さんがモスキートモス号を入手したのはいつ頃ですか?

馬場 :最初に話がずいぶん古い、昔の事になってしまう事をお詫びします。1機目はもう17年も昔(1986年)の事です。
 いざ飛ばしてみると、その独特の世界にのめりこんでしまい、双発機まで作りました。こちらの「ビデオライブラリー」や「ムサシノ掲示板」に紹介した機体です。
 しばらくして更に3機目を買ったのですが、こちらは作らずにただ持っているだけだったんですね、1機目と双発が健在でしたから。

MML:なるほど、実は私も3つ持っていて、ようやく今3つ目をMINI仕様のモスキートモス号として組み立てているところです。それで、馬場さんがモスキートモス号を入手しようと思った理由は何だったのですか?

馬場 :う〜ん、1機目の時は特にこれといった理由はなかったと思います。順番としてそろそろ、という感じだったんでしょうね。プレイリー号の次に館林さんから勧められたスカイコアラ号にも夢中でしたし。
 今もそうですが、その頃もムサシノは宣伝があまり派手ではありませんでしたから…。3機目を買ったのは、まあ、「勢い」みたいなもので…。

MML:なるほど、順番で買ってみたらはまってしまったと。それでまたRC飛行機を再スタートして初めにモスキートモス号をディーゼル仕様で作ったということなのですね。

馬場 :つい先日、その買っておいた(10年以上持っていた)3機目がやっと完成し、テスト飛行を終えたところです。実は今回は1機目(エンヤ06TV・560g)より更に軽いエンジン(Gマーク061かエンヤ049)を使いもっと軽い機体を作ろうと思っていました。
 ところが土壇場で11CX・ディーゼルが発売されたんですね。ショッキングなニュースでした。かなり迷いましたが、今時新型のディーゼルなんぞをデビューさせるエンヤの心意気に感じて予定変更、こちらを使う事にしたわけです。エンジンとプロペラだけで逆に70gほど重くなるのですが承知の上です。
 ディーゼルエンジンはトルクがあってグローエンジンよりも大きいプロペラが回せると聞いていますが、確かにそんな感じですね。10x5だと3500回転で滑走離陸、3000で場周飛行、4000ではかなりの急上昇、というかオーバーパワーといった感じです。
 これ位なら09エンジンでも回せるんですが、当然11CX・Dの方が楽々と回りますね。
 まだ慣らしが十分でなく、本格的に回し込んでいないのですが、APC9x4でエンコン・ハイ(キャブレターは1/2開)では完全な垂直上昇ができそうです。

MML:エンヤ11CX-Dは私も持っていますが、とてもカチッとした精密そうな作りの、きれいなエンジンです。性能もかなりのものみたいです。ところで最初のモスキートモス号はどうなったのでしょうか?

馬場 :去年の暮れにラジコンに復帰した時、その1機目のモスキートモス号を押入れから引っ張り出したのですが、さすがにボロボロでした。
 破損は修理できますが、それ以上に燃料のひまし油が塗装を通してバルサに滲み込み、胴体前半分が茶色の斑点だらけになっていました。
 家族は「よくそんなものを…」とあきれていましたが、自分でもそう思いましたね。 家族が押入れの一角(最上段)を提供してくれた事と、その後ずっと何も言わず無関心でいてくれた事がよかったんでしょうね。
 10年ほど前に今の家に引っ越した時も持って来ていた訳ですが、その時はまだきれいだったんでしょうかね…。まあ、一応寿命、という事で処分しました。

MML:さすがに10年ほど眠っているとかなり厳しいのかもしれませんね。それでも1号機を大破せずに今日に至ったということは、扱いの丁寧さと安全飛行が伺えるものです。飛行といえば、馬場さんはモスキートモス号のフライトでどこが面白いですか?

一緒に走ることも出来る

馬場 :やっぱり自分の周りをゆっくり飛ばす事ですね。ジョギングくらいのスピードで付いて行けますから翼端をつまんだまましばらく一緒に走る事ができます。方向が変わってもそのまま自分も付いていくだけですし、上昇していく場合はその翼端を軽く上下にゆすってやると水平に戻ります。こんな感じで数十メートル一緒に走る事ができます。
 それから微風の時にホバリングしている機体の姿勢を直接手で直してやったりもしましたが、でもこれは機体がゆらゆらしているので、万一の事を思うとあまりやらない方が…。

MML:なんだかモスキートモス号の低速パフォーマンスを余すところ無く発揮しているように思えます。あの軽量な(560g)モスキートモス号なら十分そんな楽しみ方が出来ると思います。逆に面白くないフライトと言うのはありましたか?

馬場 :自分で作ったモスキートモス号なので、飛ばしている時はただ楽しいだけですね。親バカかも…。

MML:やはり一から組むと愛着がわきます。自分の機体はかなりボロですが、壊れても修理してまた飛ばしてやりますものね。
 製作面で言うとモスキートモス号は人によっては作りにくいと思われているようですが、馬場さんはモスキートモス号を作ってみてどうでしたか?

馬場 :今回エンジンに11CXディーゼルを使ったわけですが、エンジンの入手前に胴体を作ったので重心位置と機首の強度に気を遣いました。
 性能上有利ですので、搭載メカを重心位置に集中して積みたかったのですが、そのためにメカを積む前に重心を合わせておく必要がありました。結果として5ミリほど後ろだったのですがこれ位はどうにでもなります。
 他の部分は以前にもムサシノの機体は何機か作っていたので、特に難しい、とは感じなかったです。胴体のトラス部分もそれまでにスカイコアラ号を作ったりしていましたから。
 前後の胴体をつなぐ時は、テーブルからはみ出た胴体前部の下に台を置き、1センチ角に切った両面テープでテーブルに固定(接着)してしまいます。その際、胴体幅の中心に何箇所か線を入れ(胴体のセンターラインですね)、ピンと張った糸を当て、上から眺めるとまっすぐな胴体が作れます。固定したら三角材を気の済むまで整形し、エポキシでしっかり接着します。削り過ぎたら2ミリバルサを継ぎ足すだけです。
 他の機体に比べ作業量は確かに多く時間はかかりますが単にそれだけの事で、慎重に組み立てていけばやがて完成する、といった感じです。

MML:重心位置は作っている途中から意識していないと後でとても沢山の重りをつける羽目になったりしますね。でも軽さを取って重心をおろそかにするとかえっておかしくなるから、最初から意識して作っていくことが大事なのだと思います。それとトラスと胴体の継ぎ目は作業板に胴体そのものを固定してやればよかったんですね。早速真似させていただきます。
 馬場さんのこれまでの経験の中で、モスキートモス号はこんなフライトが面白い、というものはありますか?

夜間飛行は幻想的でした

馬場 :実はずっと以前の話になりますが、1回だけモスキートモス号で夜間飛行をした事があります。冬のさなか2月頃だったと思いますが、家族が皆出かけ一人で留守番をしていた時の事です。
 外は満月で気温は氷点下、雪の照り返しでかなり明るいんですよね。田んぼの上は凍みて固くなり、ゴム長で歩けるくらい。
 夜の9時頃でしたがモスキートモス号を持ち出して、そっと飛ばしてみました。目の高さで近づいて来る時、最初シルエットから次第にはっきりしてきて、やがてまたシルエットになって遠ざかっていく。少し高く上げて自分と月の間を通過させるとやっぱりフィルムがキラリと光るんですね。多少遠ざかってもラダートリムを打つとやがて戻ってくる。月明かりの誰もいない田んぼの中で1時間ほど、とても幻想的でした。

MML:それは凄い。私は一度初心の頃に薄暗くなり、どちらに向いているか分からなくなってパニックになったことがありました。でも今なら、十分にゆっくり飛ばす方法が分かっていますのでそのような月明かりでもそっと飛ばすことが出来るかもしれません。
 もちろん人っ子一人いないのが最低条件ですが、モスキートモス号の聞こえるか聞こえないかの排気音を残しながら月夜にふわりふわりと飛ぶ姿はおっしゃるようにとても幻想的でしょうね。
 ところで今回のディーゼル仕様モスキートモス号はずいぶん手がかかっているようですね?

馬場 :3機目の今回は、

  1. フラップの面積を主翼中央で前後幅4センチに大きくした。
  2. それに合わせて胴体後部(トラス部分)を3センチ長くした。もっともこれは材料が3センチ長かったので切らずにそのまま使っただけです。エレベーターを8ミリ拡大し、ラダーも形を変え、面積を拡大。
  3. 主翼中央、ゴムバンドの掛かる部分を内側と外側から補強。
  4. 後部ハッチをやめて接着してしまい、胴体の強度を上げた。
  5. 尾そりをラダー連動の尾輪式に。
  6. 主翼の上半角部分のリブの肉抜き。
  7. エンジンにエンヤ11CXディーゼルを使うので、機首とエンジンマウントを丈夫にした。
  8. 重心を合わせるため機首を2.5センチ短くした。
  9. 胴体内部、燃料タンク下のスペースを箱状にし、更にマジックインキ容器製サブマフラーを内蔵しパイプでつなぎ、二段階のサブマフラーとして利用。
  10. 大直径(9〜11インチ)プロペラを使うので脚を長くした。
  11. フラップ取付材の前後を7〜10ミリあけ、被覆フィルムの「のりしろ」とした。
  12. 前後胴体の連結部分に補強材を入れた。
  13. 主翼翼端に翼端板を付けた。これは全くの素人考えですが、主翼下の空気を大きなフラップと翼端板で抱え込もうという魂胆です。効果があるのかないのか、逆に弊害があるのか判りませんが、まあ、実験、という意味もあります。
 以上が変更内容ですが、これらには重量増加や強度の低下、といったデメリットも伴うわけですから全てが「改良」となるわけではありません。特に軽量化については当然その部分は強度が落ちますから、極限を狙う場合は別として、この先何年も飛ばす、という事も考えるべきだと思います。
 今回のリブの肉抜きにしても翼端(というか重心から離れた部分)は軽いほど性能上有利と考えたのですが、現実は20gも違わないわけで実際に飛ばしてはっきり判るほどの差などないだろう、というのが本音です。その代わり強度は確実に落ちているわけで、もともとのキットの材料がよく吟味されている事を考えるとトータルではどういうものか、という疑問もあるのです。
 やはり軽量化は搭載メカや塗装、被覆、エンジン(モーター)や小物類で、というのが本来だと思います。

MML:やはりずいぶん手をかけてあるということが分かります。4cmに延長のフラップのは私も経験していますがなかなか効果的ですね。それに胴体内サブマフラーとマジックインキ加工、これもかなりかっこいいですよね。消音効果も高いのではないでしょうか。
 改造についておっしゃることはまったく私も同意見です。もともとの完成度がかなり高いのでトータルに改善できる、ということは少なく、何かを捨てないと何かがよくならない、ということが往々にしてあると思います。しかもその結果、おっしゃっているように重量の軽減と強度の低下を考え合わせたらどうか、など本当の意味で難しい問題があります。ですからそのようないろんな問題をうまく解決しながらプロダクションモデルとなっているムサシノの機体は眺めているととても勉強になるように思うと同時に、そのマージンの一部をオーナーの好みに応じてアレンジすることも大いに可能だと思います。
 今回の改造では失敗したところは無かったのですか?

馬場 :機首を短くし過ぎました。もっともこれは材料の都合もあって仕方なかった事なのですが、おかげで機首ハッチから燃料タンクの出し入れができなくなり、出し入れする時はサーボを外さなければならなくなりました。あと1〜1.5センチ長ければ重心も含めベストだったのですが、そのために胴体側板を2枚無駄にするのももったいないと思います。

MML:なるほど、確かにそうですね。いっそ、胴体側板の継ぎ合わせの時点で1.5センチずらしたらどうかなと思わなくもないですが、そのことで胴体補強材や胴体底板などを自分で都合することになりますし、簡単にはいかないですね。さて、馬場さんのスペシャルのなかでもひときわ目を引くのが双発モスキートモス号ですが、作ろうと思った動機をお聞かせください。

 「見る前に跳んで」しまった

馬場 :動機はいくつかあります。手元にエンヤ09-3型の右排気と左排気の両方あった事、1機目がラジアルマウントだったので、09用のエンジンマウント(材料)が1個余っていた事、ツィンプラム号とツィンチェリー号の設計図を見てその大きなサイドスラストにびっくりした事、サブマフラーを付けた2台の09エンジンの共鳴音を聞いてみたかった事、等ですね。

MML:実際にやってみて製作は難しかったですか?

馬場 :製作自体はモスキートモス号とほぼ同じですから特に問題はなかったです。重心位置もぴったりでした。
 ただエンコンリンケージに少し迷いました。結局L型アングルを使いましたが、今思うと左右のエンジンから来る2本のピアノ線を1本にまとめ、それを単純にサーボにつなぐ、という方法が良かったと思います。この方がガタが出ないし簡単ですから。

MML:そうですね。

馬場 :エンコンレバー下端でどちらも2500rpm、そしてレバーを上げた時に左右のエンジンが同時に回転が上昇し始めるようにします。当然の事ですがアイドリングから最高回転までずっと左右がピタリと一致するわけではありません。私の場合、途中(中速)で一箇所でも同調点があればいい、と思っています。それで問題なくまっすぐ飛びます。最高回転数は実は未だに計っておりません。気にならないのです。

MML:飛びについてはどうでしょうか。

馬場 :こちらの「ビデオライブラリー」にもありますが、やはりモスキートモス号らしく軽々と飛びます。野球場の中での低空場周飛行やタッチアンドゴーなどのスローフライトもできます。

MML:なるほど。

馬場 :実は右側のエンジンは逆転仕様になっています。完成した頃はどちらも正転でプロペラもMKの8x4でした。ビデオ撮影もそれで行ないましたが、その後模型店で9インチの逆ピッチの木製プロペラ(9x4、9x5、各2本)を見つけ、右側エンジンのクランクシャフトを逆転用に細工し、今回の修復を機会にそれを組み込んでみました。性能は左右全く同じですがプロペラの直径が大きくなった分、回転数が落ち、以前より更に落ち着いて飛ばせるようになりました。吹き上がりなどむしろ迫力が増しました。

MML:左右で逆回転というのは実機と同じですね。

馬場 :「ムサシノ掲示板」でも紹介したのですが、飛行中に片方のエンジンが止まると次第に高度が下がり、やがてゆっくりとエンジンが止まった方へ旋回して行きます。ラダートリムを当て、エンジンの回転を上げるとそのまま直進、または上昇して行きます。あとは普通の単発の飛行機と変わりません。そのまま8の字や上昇、下降は勿論、滑走離陸やタッチアンドゴーも問題なくできます。でも片肺というのはやはり正常な状態とはいえないので長くは飛ばしません。残ったほうのエンジンがかわいそうですから…。左右のプロペラの反動トルクがそれぞれ機体を起こす方向に働くので片肺飛行には有利だと思っています。

MML:素晴らしいですね。双発にすることでモスキートモス号の魅力が失われるどころかさらに味わい深いものになったようです。
 ビデオで拝見していても馬場さんのフライトは大変安全性に配慮されているようですが、これまでに壊したことは?

馬場 :ウ〜ン、しいていえば以前の06単発機で旋回時に翼端が地面に触れて木製のプロペラを折った事と、タキシングのやり過ぎで尾そりが取れてしまった事くらいでしょうか…。こちらのビデオライブラリー撮影の時は取れたまま撮影しましたが、その後エポキシで付けました。(プロペラは勿論交換)
 ビデオでご覧になったようにあまり無茶な飛ばし方はしていないのです。プレイリー号とは対照的…ですね、向こうは満身創痍、継ぎはぎだらけです。とてもお見せできません…。

MML:やはり、墜落とか大きな破損はないということですね。鳥シリーズの模範的飛行パターンを実践されているからではないかと思います。
 都合3機を作られた馬場さんから見て、モスキートモス号のどこに魅力を感じますか?

頭だけで出来るデザインではない

馬場 :まず何といってもそのユニークなスタイルです。これは頭だけで考えて出てくるデザインではないですね。長い経験と「エイヤッ」という思い切りから生まれたものだと思います。
作りやすいように直線が基調ですが、バランスがいいのか奇抜なのに不自然な感じがしませんね。ラジコンを始めた当初、特にそれほどの印象がわかなかったのもそのせいだと思います。それが実際に作ってみてそのスタイル、飛びっぷりにビックリしました。
 それと大きさ。この大きさあってのモスキートモス号だと思います。すごい割り切りですね。
 あと、飛行に関しては私も他の方たちと全く同様で、そのスローフライトぶりにどっぷり首まで浸かっている状態です。

MML:目的というか思想が極めて明快なので機体デザインにも迷いが感じられません。一刀彫で仕上げたような、硬軟が同居するような不思議な機体だと思います。
 話は少しモスキートモス号から離れますが、馬場さんはピーナッツスケールも手がけられているとお聞きしていますが、ピーナッツの面白さはどこにあるのでしょうか。

ピーナッツスケールの面白さは…

馬場 :ピーナッツスケール機というのは翼幅が13インチ(33センチ)というルールのゴム動力スケール機の事です。重さは軽いもので8グラム位、複葉機で20グラム位でしょうか、小さくてかわいらしいものです。
作る人の好みで何となく二つの方向に分かれるみたいですね。少しでも実機に近づけようと操縦席、パイロット、エンジンなどを精密に再現し、塗装もきれい、という「スケール派」と、それよりもとにかく軽く作って飛びを重視する「飛行派」です。
私は細かい作業は苦手なので完全に「飛行派」ですが、時々、機種によっては「スケール派」に近づく事もあります。見た目に凝ると重くなって飛びが悪くなり、逆だと見た目が淋しい、このバランスが難しく、また楽しいのだと思っています。
 それから私などとてもできませんが、上手な人は自分で資料を集めて図面を書き、びっくりするほどきれいに仕上げ、しかもよく飛びます。そういうのを見る事もまた刺激になって楽しいものですね。

MML:本当にあれは凄いです。一度完成機を見たことがありますが何でこんな細い角材でゴムの力に耐えるのか不思議です。やはりこれは底抜けに模型飛行機が好きでないと出来ないなと思います。
 ピーナッツ独特の製作技術もあると思いますが、モスキートモス号の製作に役立ちそうなものはありますか。

馬場 :ピーナッツ機は細いバルサの角材(1〜1.5ミリ角)で骨組みを作りますが、材料自体は大変弱いものです。それを合理的に配分し、組み上げる事によって最後は丈夫な機体が出来上がります。補強材なども少ない量でできるだけ効果を出す事を考えますし、軽量化を図る場合でも全体のバランスを見て一ヶ所に集中しないよう心がけ、塗装も必要最小限にとどめます。
 これらには多少の慣れが必要かもしれませんが、考えてみればモスキートモス号の場合と全く同じですね。それとピーナッツ機は飛行中に操縦などできませんから、最初は軽く飛ばしながら機体の調整をやっていくわけですが、その時に重心位置のずれや機体のねじれなどがあると思うように飛んでくれません。重くてもそれなりに飛んでくれますが、機体の狂いはごまかしが利かないのです。
 「正確に作る事」は「軽く作る事」より大切だと思っています。

MML:最後の一言は重みがありますね、「正確に作る事」は「軽く作る事」より大切、これ今度使わせてもらいます。
 馬場さんが両方楽しまれてみて、ピーナッツとモスキートモス号の面白さの共通点はありますか。

馬場 :個人的な思いですが、ムサシノの機体はフリーフライト機の流れを汲んでいる、という印象があります。ムサシノは吟味された材料をこつこつ組み立てていくという本来の楽しみをしっかり守り、しかも保守的ではない、というメーカーだと思います。
 飛行にしてもたとえばモスキートモス号やプレイリー号のエンジン回転数とラダー、エレベータートリムを適当に調整してから、送信機を地上に置いてそのまま手投げ発進すると緩やかに旋回しながら上昇して行きます。適当な高度に達したところでエンジンを少し絞るとゆっくり下降して来ます。飛行場所が広い場合、更に放っておくとそのまま着陸してしまいます。フリーフライト機と同じなんですね。
 モスキートモス号は放っておいても安定よく飛んでくれるので、たとえば自分の周りを場周飛行させる場合などあまり操縦しません。飛行中の半分は送信機から右手が離れています。
 飛行機が本来持つ安定した飛行を楽しむ、という事では共通していると思っています。

MML:それでは馬場さんより、これからモスキートモス号を作ろう、飛ばそうという方に励ましのメッセージをお願いします。

生き物のように飛ぶ

馬場 :初めてモスキートモス号を作る場合、他の機体に比べ作業量が多く大変だと思われるかもしれません。実際、それなりの手間と時間はかかります。キットの材料も細く、薄く、軽いのでデリケートな印象を受けるかもしれません。でもこれは見方を変えると作る手ごたえは十分、ともいえます。
 市販のエンジン機キットの中ではモスキートモス号のスローフライト性能は掛け値なしに世界一だと思います。少し飛ばしなれてくると、モスキートモス号はあまり操縦しなくても非常に安定よく飛んでくれますが、そんな時はまるで生き物のような、自分の意思で飛んでいるような印象を受けます。操縦する側とされる側の区別がなくなり、パイロットとモスキートモス号だけのパラダイスで遊ぶ事ができます。まさに「時間よ止まれ…」ですね。
 それからモスキートモス号は発売されたのが1978年ですから、もう25年ほどの歴史があるにもかかわらず、古臭いという感じがしないのですね。とにかくユニークな機体です。製作にはそれなりの環境も必要になってきますが、出来上がった機体には大きな愛着もわいてくると思います。一人でも多くの方に楽しんで頂きたいですね。

MML:いつも私が思っていることと同じです。やはり、モスキートモス号の魅力は普遍的なものを帯びているのですね。私も本当に一人でも多くの人に紹介していきたいと思っています。
では最後になりますがMMLへのご意見などありましたらお聞かせください。

馬場 :「独断と偏見」を思いっきり、これでもか、と発揮してください。一つの方向に[とんがって]下さい。モスキートモス号に関しては、「ウラのウラ」(これってオモテ?)まで知り尽くしていながら、時にはサラリと「ゆっくりだけがエライんじゃないよ…」、というのもいいかも…。

MML:本日は大変長い間どうも有難うございました。今後のますますのご活躍を期待しております。
 


これが、かつてムサシノ通信にも紹介された双発モスキートモス号です。


双発エンジンのスロットルコントロールリンケージとサブマフラー


新作のディーゼル仕様モスキートモス号


肉抜きリブ


前後胴体接続 テーブルに固定、これから三角板を…


接続部、補強


胴体内、サブマフラー(消音システム)
フタをする前


機首部


後姿


翼端板、拡大フラップ、フラップ取り付け材、肉抜きリブ


メカ積み直前  ジャスト 600g


信濃川河川敷広場 かなり緊張…
 


 
馬場さんのモスキートモス号の仕様(単発機)
エンジン エンヤ11CXディーゼル (50ccタンク)
プロポ ロジテック 3ch (エンコンサーボ フタバ)
メインギア 自作特製超ロングギア
プロペラ 9〜11x5
重量 680g (燃料含まず)

 
馬場さんのモスキートモス号の仕様(双発機)
エンジン エンヤ 09 x 2 (右側 逆転  40ccタンク x 2)
プロポ ロジテック 3ch
プロペラ 9x4
重量 1020g

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