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バーチャルインタビュー 2003/8/ 22
バーチャルインタビューは、モスキートモス号ファンの方々にメールでアンケートをお願いし、それを元に対談形式に再構成したものです。インタビューに応じてくださった方の校閲を経て公開しており、脚色等は行っておりません。
今回のお客様:馬場さん
最初から決めていた今回のバーチャルインタビューは、新潟の馬場さんです。かつてムサシノ模型飛行機研究所のホームページがあったときは、馬場さんがムサシノ通信に投稿なさった文を読むことが出来ました。私にとっては伝説のような方ですが、本当にちょっとしたきっかけからメールを交換していただくようになりました。MML:馬場さんこんにちは。本日はインタビューにお出頂いて有難うございます。 馬場 :こんにちは、新潟の馬場です。どうぞよろしく。 MML:早速ですが、馬場さんのラジコン開始のきっかけはどのようなものだったのでしょうか? 馬場 :ラジコン飛行機を始めてみようと思ったのは昭和57年(1982年)の秋でした。最初からムサシノと決めていたので、スカイカンガルー号を候補として館林さんに問い合わせの手紙を書いたところ、発売されたばかりのプレイリー号を推薦されました。
MML:まさしく正統のムサシノファンというか、王道のような履歴だと思います。他には何か楽しまれていた機体はありますか? 馬場 :えーと、実は、ですね…、当時売られていたムサシノの機種は全部1〜2機ずつ買いました。他にサンデーアルファ(ヨシオカ)、フラミンゴ(テトラ)、インザ・ムード(アトリエ・コキール)なども。こんなに買い込んでいながら更に途中からゴム動力のフリーフライト機にも手を出した事もあって当然全部作れるはずもなく、実際に飛んだムサシノ機は15、6機だと思います。おかげで押入れの中に未だに箱入りキットがいくつか残っている始末です。フレンドカブ号、トイボックス号(編注:ともにムサシノの絶版機)、先のインザ・ムードなどですが、なんともバチが当たりそうですね。 MML:おお、なんだかずいぶん名機が出てきますね。トイボックス号なんてまた凄くマニアックです。現状で飛ばせる機体はどのようなものですか? 馬場 :今飛ばせる機体は、新作のモスキートモス号(エンヤ11CX・D)、プレイリー号(修復機・固定フラップ付き・エンヤ09)、スカイカンガルー号(修復機・エルロン付4ch・エンヤ09)、双発モスキートモス号(修復機・エンヤ09・2基)、以上の4機です。 そろそろ順番かなMML:やはりと言うかなんと言うか、すべてムサシノ機ですね。モスキートモス号は2機今でもあることになりますね。馬場さんがモスキートモス号を入手したのはいつ頃ですか?馬場 :最初に話がずいぶん古い、昔の事になってしまう事をお詫びします。1機目はもう17年も昔(1986年)の事です。
MML:なるほど、実は私も3つ持っていて、ようやく今3つ目をMINI仕様のモスキートモス号として組み立てているところです。それで、馬場さんがモスキートモス号を入手しようと思った理由は何だったのですか? 馬場 :う〜ん、1機目の時は特にこれといった理由はなかったと思います。順番としてそろそろ、という感じだったんでしょうね。プレイリー号の次に館林さんから勧められたスカイコアラ号にも夢中でしたし。
MML:なるほど、順番で買ってみたらはまってしまったと。それでまたRC飛行機を再スタートして初めにモスキートモス号をディーゼル仕様で作ったということなのですね。 馬場 :つい先日、その買っておいた(10年以上持っていた)3機目がやっと完成し、テスト飛行を終えたところです。実は今回は1機目(エンヤ06TV・560g)より更に軽いエンジン(Gマーク061かエンヤ049)を使いもっと軽い機体を作ろうと思っていました。
MML:エンヤ11CX-Dは私も持っていますが、とてもカチッとした精密そうな作りの、きれいなエンジンです。性能もかなりのものみたいです。ところで最初のモスキートモス号はどうなったのでしょうか? 馬場 :去年の暮れにラジコンに復帰した時、その1機目のモスキートモス号を押入れから引っ張り出したのですが、さすがにボロボロでした。
MML:さすがに10年ほど眠っているとかなり厳しいのかもしれませんね。それでも1号機を大破せずに今日に至ったということは、扱いの丁寧さと安全飛行が伺えるものです。飛行といえば、馬場さんはモスキートモス号のフライトでどこが面白いですか? 一緒に走ることも出来る馬場 :やっぱり自分の周りをゆっくり飛ばす事ですね。ジョギングくらいのスピードで付いて行けますから翼端をつまんだまましばらく一緒に走る事ができます。方向が変わってもそのまま自分も付いていくだけですし、上昇していく場合はその翼端を軽く上下にゆすってやると水平に戻ります。こんな感じで数十メートル一緒に走る事ができます。それから微風の時にホバリングしている機体の姿勢を直接手で直してやったりもしましたが、でもこれは機体がゆらゆらしているので、万一の事を思うとあまりやらない方が…。 MML:なんだかモスキートモス号の低速パフォーマンスを余すところ無く発揮しているように思えます。あの軽量な(560g)モスキートモス号なら十分そんな楽しみ方が出来ると思います。逆に面白くないフライトと言うのはありましたか? 馬場 :自分で作ったモスキートモス号なので、飛ばしている時はただ楽しいだけですね。親バカかも…。 MML:やはり一から組むと愛着がわきます。自分の機体はかなりボロですが、壊れても修理してまた飛ばしてやりますものね。
馬場 :今回エンジンに11CXディーゼルを使ったわけですが、エンジンの入手前に胴体を作ったので重心位置と機首の強度に気を遣いました。
MML:重心位置は作っている途中から意識していないと後でとても沢山の重りをつける羽目になったりしますね。でも軽さを取って重心をおろそかにするとかえっておかしくなるから、最初から意識して作っていくことが大事なのだと思います。それとトラスと胴体の継ぎ目は作業板に胴体そのものを固定してやればよかったんですね。早速真似させていただきます。
夜間飛行は幻想的でした馬場 :実はずっと以前の話になりますが、1回だけモスキートモス号で夜間飛行をした事があります。冬のさなか2月頃だったと思いますが、家族が皆出かけ一人で留守番をしていた時の事です。外は満月で気温は氷点下、雪の照り返しでかなり明るいんですよね。田んぼの上は凍みて固くなり、ゴム長で歩けるくらい。 夜の9時頃でしたがモスキートモス号を持ち出して、そっと飛ばしてみました。目の高さで近づいて来る時、最初シルエットから次第にはっきりしてきて、やがてまたシルエットになって遠ざかっていく。少し高く上げて自分と月の間を通過させるとやっぱりフィルムがキラリと光るんですね。多少遠ざかってもラダートリムを打つとやがて戻ってくる。月明かりの誰もいない田んぼの中で1時間ほど、とても幻想的でした。 MML:それは凄い。私は一度初心の頃に薄暗くなり、どちらに向いているか分からなくなってパニックになったことがありました。でも今なら、十分にゆっくり飛ばす方法が分かっていますのでそのような月明かりでもそっと飛ばすことが出来るかもしれません。
馬場 :3機目の今回は、
今回のリブの肉抜きにしても翼端(というか重心から離れた部分)は軽いほど性能上有利と考えたのですが、現実は20gも違わないわけで実際に飛ばしてはっきり判るほどの差などないだろう、というのが本音です。その代わり強度は確実に落ちているわけで、もともとのキットの材料がよく吟味されている事を考えるとトータルではどういうものか、という疑問もあるのです。 やはり軽量化は搭載メカや塗装、被覆、エンジン(モーター)や小物類で、というのが本来だと思います。 MML:やはりずいぶん手をかけてあるということが分かります。4cmに延長のフラップのは私も経験していますがなかなか効果的ですね。それに胴体内サブマフラーとマジックインキ加工、これもかなりかっこいいですよね。消音効果も高いのではないでしょうか。
馬場 :機首を短くし過ぎました。もっともこれは材料の都合もあって仕方なかった事なのですが、おかげで機首ハッチから燃料タンクの出し入れができなくなり、出し入れする時はサーボを外さなければならなくなりました。あと1〜1.5センチ長ければ重心も含めベストだったのですが、そのために胴体側板を2枚無駄にするのももったいないと思います。 MML:なるほど、確かにそうですね。いっそ、胴体側板の継ぎ合わせの時点で1.5センチずらしたらどうかなと思わなくもないですが、そのことで胴体補強材や胴体底板などを自分で都合することになりますし、簡単にはいかないですね。さて、馬場さんのスペシャルのなかでもひときわ目を引くのが双発モスキートモス号ですが、作ろうと思った動機をお聞かせください。 「見る前に跳んで」しまった馬場 :動機はいくつかあります。手元にエンヤ09-3型の右排気と左排気の両方あった事、1機目がラジアルマウントだったので、09用のエンジンマウント(材料)が1個余っていた事、ツィンプラム号とツィンチェリー号の設計図を見てその大きなサイドスラストにびっくりした事、サブマフラーを付けた2台の09エンジンの共鳴音を聞いてみたかった事、等ですね。MML:実際にやってみて製作は難しかったですか? 馬場 :製作自体はモスキートモス号とほぼ同じですから特に問題はなかったです。重心位置もぴったりでした。
MML:そうですね。 馬場 :エンコンレバー下端でどちらも2500rpm、そしてレバーを上げた時に左右のエンジンが同時に回転が上昇し始めるようにします。当然の事ですがアイドリングから最高回転までずっと左右がピタリと一致するわけではありません。私の場合、途中(中速)で一箇所でも同調点があればいい、と思っています。それで問題なくまっすぐ飛びます。最高回転数は実は未だに計っておりません。気にならないのです。 MML:飛びについてはどうでしょうか。 馬場 :こちらの「ビデオライブラリー」にもありますが、やはりモスキートモス号らしく軽々と飛びます。野球場の中での低空場周飛行やタッチアンドゴーなどのスローフライトもできます。 MML:なるほど。 馬場 :実は右側のエンジンは逆転仕様になっています。完成した頃はどちらも正転でプロペラもMKの8x4でした。ビデオ撮影もそれで行ないましたが、その後模型店で9インチの逆ピッチの木製プロペラ(9x4、9x5、各2本)を見つけ、右側エンジンのクランクシャフトを逆転用に細工し、今回の修復を機会にそれを組み込んでみました。性能は左右全く同じですがプロペラの直径が大きくなった分、回転数が落ち、以前より更に落ち着いて飛ばせるようになりました。吹き上がりなどむしろ迫力が増しました。 MML:左右で逆回転というのは実機と同じですね。 馬場 :「ムサシノ掲示板」でも紹介したのですが、飛行中に片方のエンジンが止まると次第に高度が下がり、やがてゆっくりとエンジンが止まった方へ旋回して行きます。ラダートリムを当て、エンジンの回転を上げるとそのまま直進、または上昇して行きます。あとは普通の単発の飛行機と変わりません。そのまま8の字や上昇、下降は勿論、滑走離陸やタッチアンドゴーも問題なくできます。でも片肺というのはやはり正常な状態とはいえないので長くは飛ばしません。残ったほうのエンジンがかわいそうですから…。左右のプロペラの反動トルクがそれぞれ機体を起こす方向に働くので片肺飛行には有利だと思っています。 MML:素晴らしいですね。双発にすることでモスキートモス号の魅力が失われるどころかさらに味わい深いものになったようです。
馬場 :ウ〜ン、しいていえば以前の06単発機で旋回時に翼端が地面に触れて木製のプロペラを折った事と、タキシングのやり過ぎで尾そりが取れてしまった事くらいでしょうか…。こちらのビデオライブラリー撮影の時は取れたまま撮影しましたが、その後エポキシで付けました。(プロペラは勿論交換)
MML:やはり、墜落とか大きな破損はないということですね。鳥シリーズの模範的飛行パターンを実践されているからではないかと思います。
頭だけで出来るデザインではない馬場 :まず何といってもそのユニークなスタイルです。これは頭だけで考えて出てくるデザインではないですね。長い経験と「エイヤッ」という思い切りから生まれたものだと思います。作りやすいように直線が基調ですが、バランスがいいのか奇抜なのに不自然な感じがしませんね。ラジコンを始めた当初、特にそれほどの印象がわかなかったのもそのせいだと思います。それが実際に作ってみてそのスタイル、飛びっぷりにビックリしました。 それと大きさ。この大きさあってのモスキートモス号だと思います。すごい割り切りですね。 あと、飛行に関しては私も他の方たちと全く同様で、そのスローフライトぶりにどっぷり首まで浸かっている状態です。 MML:目的というか思想が極めて明快なので機体デザインにも迷いが感じられません。一刀彫で仕上げたような、硬軟が同居するような不思議な機体だと思います。
ピーナッツスケールの面白さは…馬場 :ピーナッツスケール機というのは翼幅が13インチ(33センチ)というルールのゴム動力スケール機の事です。重さは軽いもので8グラム位、複葉機で20グラム位でしょうか、小さくてかわいらしいものです。作る人の好みで何となく二つの方向に分かれるみたいですね。少しでも実機に近づけようと操縦席、パイロット、エンジンなどを精密に再現し、塗装もきれい、という「スケール派」と、それよりもとにかく軽く作って飛びを重視する「飛行派」です。 私は細かい作業は苦手なので完全に「飛行派」ですが、時々、機種によっては「スケール派」に近づく事もあります。見た目に凝ると重くなって飛びが悪くなり、逆だと見た目が淋しい、このバランスが難しく、また楽しいのだと思っています。 それから私などとてもできませんが、上手な人は自分で資料を集めて図面を書き、びっくりするほどきれいに仕上げ、しかもよく飛びます。そういうのを見る事もまた刺激になって楽しいものですね。 MML:本当にあれは凄いです。一度完成機を見たことがありますが何でこんな細い角材でゴムの力に耐えるのか不思議です。やはりこれは底抜けに模型飛行機が好きでないと出来ないなと思います。
馬場 :ピーナッツ機は細いバルサの角材(1〜1.5ミリ角)で骨組みを作りますが、材料自体は大変弱いものです。それを合理的に配分し、組み上げる事によって最後は丈夫な機体が出来上がります。補強材なども少ない量でできるだけ効果を出す事を考えますし、軽量化を図る場合でも全体のバランスを見て一ヶ所に集中しないよう心がけ、塗装も必要最小限にとどめます。
MML:最後の一言は重みがありますね、「正確に作る事」は「軽く作る事」より大切、これ今度使わせてもらいます。
馬場 :個人的な思いですが、ムサシノの機体はフリーフライト機の流れを汲んでいる、という印象があります。ムサシノは吟味された材料をこつこつ組み立てていくという本来の楽しみをしっかり守り、しかも保守的ではない、というメーカーだと思います。
MML:それでは馬場さんより、これからモスキートモス号を作ろう、飛ばそうという方に励ましのメッセージをお願いします。 生き物のように飛ぶ馬場 :初めてモスキートモス号を作る場合、他の機体に比べ作業量が多く大変だと思われるかもしれません。実際、それなりの手間と時間はかかります。キットの材料も細く、薄く、軽いのでデリケートな印象を受けるかもしれません。でもこれは見方を変えると作る手ごたえは十分、ともいえます。市販のエンジン機キットの中ではモスキートモス号のスローフライト性能は掛け値なしに世界一だと思います。少し飛ばしなれてくると、モスキートモス号はあまり操縦しなくても非常に安定よく飛んでくれますが、そんな時はまるで生き物のような、自分の意思で飛んでいるような印象を受けます。操縦する側とされる側の区別がなくなり、パイロットとモスキートモス号だけのパラダイスで遊ぶ事ができます。まさに「時間よ止まれ…」ですね。 それからモスキートモス号は発売されたのが1978年ですから、もう25年ほどの歴史があるにもかかわらず、古臭いという感じがしないのですね。とにかくユニークな機体です。製作にはそれなりの環境も必要になってきますが、出来上がった機体には大きな愛着もわいてくると思います。一人でも多くの方に楽しんで頂きたいですね。 MML:いつも私が思っていることと同じです。やはり、モスキートモス号の魅力は普遍的なものを帯びているのですね。私も本当に一人でも多くの人に紹介していきたいと思っています。
馬場 :「独断と偏見」を思いっきり、これでもか、と発揮してください。一つの方向に[とんがって]下さい。モスキートモス号に関しては、「ウラのウラ」(これってオモテ?)まで知り尽くしていながら、時にはサラリと「ゆっくりだけがエライんじゃないよ…」、というのもいいかも…。 MML:本日は大変長い間どうも有難うございました。今後のますますのご活躍を期待しております。
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これが、かつてムサシノ通信にも紹介された双発モスキートモス号です。
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エンジン | エンヤ11CXディーゼル (50ccタンク) |
プロポ | ロジテック 3ch (エンコンサーボ フタバ) |
メインギア | 自作特製超ロングギア |
プロペラ | 9〜11x5 |
重量 | 680g (燃料含まず) |
エンジン | エンヤ 09 x 2 (右側 逆転 40ccタンク x 2) |
プロポ | ロジテック 3ch |
プロペラ | 9x4 |
重量 | 1020g |